
AWSはAmazon.comによるクラウドコンピューティングサービスであり、従来のオンプレミス環境で構築するシステムよりも、低価格・低コストで運用・開始できる可能性があります。
AWSはもともとはAmazonの社内業務のために提供されていましたが、2006年に公開されて以降、世界中に普及して利用されています。
今後、AWSによるクラウドコンピューティングサービスは、より広まっていくと考えられます。
この記事では、AWSのトータル・ソリューションについてまとめます。
AWSのトータル・ソリューション
AWSは非常に多くのサービスを提供しています。
AWSでどのようなことができるのか、という疑問を耳にすることがありますが、その答えとしては、コンピュータを使ってできることはほぼすべてのことができる、と言えるでしょう。
AWSは年間で1500回を超えるアップデートをすることもあり、常に最新技術を利用できます。
特定のユーザーのみが利用できるサービスは存在せず、AWSがリリースの発表をしたら、すべてのユーザーが同じサービスを同じ料金で利用できます。
AWSのサービスは165を超え、代表的なものでも以下のように、豊富なサービスが提供されています。
コンピューティング・ネットワーク
・Amazon EC2 :クラウド上の仮想サーバー・AWS Lambda :サーバーレスコンピューティング
・Elastic Load Balancing :Amazon EC2 用ロードバランサー
・Amazon Route 53 :クラウドDNSサービス
・AWS DirectConnect :既存のオンプレミスとAWSを専用線接続
・Amazon CloudFront :コンテンツ配信ネットワーク
クラウドストレージ
・Amazon S3 :クラウドストレージ・Amazon EBS :Amazon EC2 用ブロックストレージ
・Amazon EFS :Amazon EC2 用フルマネージド型ファイルシステム
・Amazon Glacier :アーカイブなどの長期保存向けオブジェクトストレージ
データベース
・Amazon RDS :フルマネージド型リレーショナルデータベース・Amazon Aurora :数倍パフォーマンスが向上するMySQL、PostgreSQL互換リレーショナルデータベース
・Amazon DynamoDB :マネージド型の高速NoSQLデータベース
・Amazon Redshift :ペタバイト規模のデータウェアハウス
・Amazon ElastiCache :フルマネージド型インメモリデータストアとインメモリキャッシュ
監視・メッセージング
・Amazon ClroudWatch :クラウド及びアプリケーションのモニタリング・Amazon SNS :プッシュ通知サービス
・Amazon SQS :フルマネージド型メッセージキューサービス
・AWS CloudTrial :アカウント利用ログの記録・履歴管理
IoT・人工知能・機械学習
・Amazon Machine Learning :機械学習テクノロジーサービス・AWS IoT :デバイス間接続のためのマネージド型プラットフォーム
・Amazon Polly :深層学習を利用して文章を音声に変換
・Amazon Lex :音声認識、テキストの深層学習によりチャットボットなどの対話型インターフェースを実現
・Amazon Rekognition :深層学習に基づく画像認識サービス
開発者用ツール
・AWS CodePipeline :アプリケーションのアップデートを可能にする継続的デリバリーサービス・AWS CodeDeploy :インスタンスへのコードデプロイを自動化
・AWS CodeCommit :プライベートGitリポジトリをホスティング
また、AWSは必要なときに、必要なだけITリソースを活用できます。
数クリック、数分で実質無限のストレージを確保できますから、従来のオンプレミス環境のように繁忙期に、サーバーの確保に労力を割かれることもありません。
従量制料金を採用しており、使った分だけの料金しかかかりません。
さらに、ピーク時の負荷に合わせて常にストレージなどのリソースを確保しておく必要はなく、サイジングが柔軟にできますから、常に適切なサイズのシステムを構築できます。
そのサイジングも、自動で監視して、トラフィックに合わせてサイズアップ・サイズダウンするようにできますから、常に最適なコストでシステムを運用できるのも、AWSのメリットです。
AWSで一度実装して動かしたシステムは、他のデータセンターに移植可能です。
AWSは日本以外にも多くの地域にデータセンターを持っていて、グローバル展開にもすぐに対応できます。
同じ使用感でシステムを運用できますから、海外のデータセンターを確保するために視察に行ったり、そのデータセンターでシステムを新たに構築する必要もありません。
なにより初期費用が発生せず、莫大なシステム投資が必要ありませんので、IT投資判断に縛られずシステムを導入できます。
AWSで新たなサービスがリリースされると同時に、すべてのユーザーが利用できるようになりますので、最新の技術をちょっと試してみて、自社に合わなかったらすぐにやめる、ということも可能です。
AWSのトータル・ソリューション例
AWSは非常に多くの企業にトータル・ソリューションを提供してきました。
AWSの導入事例は数えきれず、日本だけでも10万以上の顧客がいます。
日本のゲームソフト販売・開発会社として非常に有名なスクウェア・エニックスも、AWSを導入しています。
スクウェア・エニックスの主力のゲームコンテンツの一つとして「ドラゴンクエスト」があります。
ドラゴンクエストシリーズの「ドラゴンクエストⅩ」はMMORPG(多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)と呼ばれるジャンルで、ユーザーはゲームサーバーに接続することで、他の多くのユーザー一緒に、ゲームをプレイします。
日本で100万本を売り上げ、発売から数年経った現在(2019年6月)でも人気を誇るタイトルです。
ドラゴンクエストⅩでは、ゲームに連動するポータルサイトやスマートフォン用のアプリケーションを提供していて、ゲーム内のメール、買い物、キャラクター管理などを行うことができるシステムを実装しています。
また、ゲーム内で撮影した写真を、ポータルサイトで閲覧・管理できるようになっています。
ゲーム内で写真が撮影されると、サーバーに画像が送られ、サーバー上でサムネイルの作成やコピーライト表示の追加などの処理が行われます。
ゲーム内イベントや、大晦日やクリスマスなど、特別な日にはサーバーに非常に負荷がかかり、反映されるまで非常に3時間から4時間もかかることがありました。
スクウェア・エニックスでは、この高速化のためにAWSを導入しました。
処理が集中するのは年に数回しかなく、そのためだけに高価なサーバーを導入するのは現実的ではなかったからです。
AWS LambdaはAWSのインフラ上でコードを実行し、理論上は無制限にスケーリングできることも、スクウェア・エニックスのトータル・ソリューションにとって重要でした。
スクウェア・エニックスでは、画像処理のしくみをAWS Lambdaで動かせるようにしました。
以下のようなシステムです。
ユーザー ユーザー ……
↓画像 ↓画像
スクエアエニックスサーバー スクウェア・エニックスサーバー ……
↓ ↓
↓画像 ↓画像
↓ ↓
→→→→→ Amazon S3 ←
↑↓
AWS Lambda
↓
Amazon SQS
↓↑
スクウェア・エニックスサーバー
↓↑
ユーザー
写真撮影が行われると、写真のバイナリデータがAmazon S3に送られ、AWS Lambdaで処理されます。
そしてAmazon SQSから出されるバイナリデータを含むキューを、自社のサーバーに保存します。
その結果、これまで数時間かかっていた大晦日などのイベント時期の処理が、十数秒で完了し、運用コストもオンプレミス環境で行っていたころの20分の1程度になったと言います。
AWSの保守・ユーザーサポート
AWSは保守・ユーザーサポートもあり、安心して利用できます。
AWSのユーザーサポートは以下の4種類があります。
・ベーシックサポートプラン
・開発者サポートプラン
・ビジネスサポートプラン
・エンタープライズサポートプラン
これらのサポートはすべて日本語に対応していて、カスタマーサービスの対応はすべて日本時間平日の9時から18時です。
それぞれのさまざまな違いはありますが、大きな違いは料金と緊急度に対する初回応答時間です。
緊急度と初回応答時間は以下のようになります。
ベーシックサポートプラン
決まっていない開発者サポートプラン
障害・開発中の急ぎの問い合わせ :12時間通常の問い合わせ・機能要望 :24時間(日本時間9時から18時)
ビジネスサポートプラン
発生中の障害(ビジネスへの影響大) :1時間発生中の障害 :4時間
障害・開発中の急ぎの問い合わせ :12時間
通常の問い合わせ・機能要望 :24時間
エンタープライズサポートプラン
非常緊急 :15分発生中の障害(ビジネスへの影響大) :1時間
発生中の障害 :4時間
障害・開発中の急ぎの問い合わせ :12時間
通常の問い合わせ・機能要望 :24時間
料金は以下の通りです。
ベーシックサポートプラン
利用料に含まれる開発者サポートプラン
・29USD・AWSの月額使用料の3%
のいずれか大きい方
ビジネスサポートプラン
・100USD・AWSの月額使用料のうち
最初の0~10000USDの10%
10000~80000USDの7%
80000~250000USDの5%
250000USD~の3%のいずれか大きい方
エンタープライズサポートプラン
・15000USD・AWSの月額使用料のうち
最初の0~150000USDの10%
150000~500000USDの7%
500000~1000000USDの5%
1000000USD~の3%のいずれか大きい方
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、AWSのトータル・ソリューションとその事例についてまとめました。
また、AWSの保守・ユーザーサポートについてもまとめました。
AWSを利用することで、ハードウェアコストの削減や、人員リソースの削減も見込まれ、その分を自社の事業に割り当てることができるようになります。
ご参考になれば幸いです。