もともとはAmazonの社内業務を行うためにサービスを提供していましたが、2006年からは一般に公開され、全世界に向けてサービスを提供しています。
世界中にデータセンターを持っていて、グローバル展開を考えている企業にとっても、大きなメリットがあります。
株式会社あきんどスシローや株式会社ニコン、株式会社日立製作所、株式会社バンダイナムコゲームス、協和発酵キリン株式会社、三井物産株式会社、トヨタ自動車株式会社など、名だたる企業もAWSを導入しています。
AWSを利用することで、ITリソースに割くコストを自社の製品開発に充てられるため、事業の進展が見込まれます。
この記事では、AWSのシステム設計や運用設計などについてまとめます。
実績に基づいたシステム設計・運用設計例(Netflix)
Netflixは、オンラインDVDレンタル・映像ストリーミング配信事業を行っている企業です。
世界中に映像を配信していて、日本でも多くの人がNetflixのサービスを利用しています。
Netflixのコンピューティングとストレージは、ほぼすべてがAWSのサービスを利用しています。
データベース・分析・レコメンデーションエンジン・動画変換など、合計で100000個以上のAWSのサーバーインスタンスを使用しており、AWSはNetflixのグローバル展開の一助となっていることは間違いありません。
NetflixによるAWSのシステムでは、動的なネットワーク環境が構築され、AWS内部やインターネットを通じて、アプリケーションが絶えず通信しています。
そのため、Netflixのシステムにおいて重要なのは、ネットワークのモニタリングと最適化です。
ネットワークのモニタリングと最適化を行うことで、効率の向上とコストの削減を図ることができます。
特に、Netflixでは、アプリケーションのダウンタイムをいち早く検出して稼働率を向上させるため、さらにアプリケーションの最適な配置をしてパフォーマンスを向上させるために、仮想プライベートクラウドフローログのデータ(数テラバイト)を拡充、分析する必要がありました。
Netflixのような動的環境では、通常のログ解析で用いるような通信先と通信元のIPアドレスを元にした通信情報は、あまり意味がありません。
IPアドレスが毎日、分単位でアプリケーション間を浮動するからです。
そこでVPCフローログとアプリケーションメタデータを組み合わせ、アプリケーションとリージョン間の通信をさらに詳しく把握できるようなシステムをAWSを用いて構築しました。
Amazon Kinesis Streamsを使用して、フローログを集中管理するようなシステムです。
アプリケーションはリアルタイムでAmazon Kinesis Streamsからデータを読み込み、アプリケーションメタデータを使ってネットワーキング環境の全体像を把握します。
Netflixは、このデータをDruid(オープンソースの分析アプリケーション)に送信して、DruidのOLAPクエリ機能により、データを分析、ネットワークの動作、パフォーマンスを解析しました。
Netflixの場合、ユーザーがNetflixを頻繁に使用する時間などが決まっていることから、ネットワーク使用量は周期的になります。
これもAmazon Kinesis Streamsのスケーラブルな特徴にあっていて、コスト効率の良いスケールアップ、スケールダウンを行っています。
実績に基づいたシステム設計・運用設計(クックパッド株式会社)
クックパッド株式会社でも、AWSを導入しています。
クックパッド株式会社は1998年から、料理のレシピのコミュニティサイトを運営していて、多くの方がクックパッドを利用して、料理を楽しんでいます。
2009年7月には東証1部に上場し、資本金が50送縁以上の大企業に成長しています。
海外でのサービス展開も積極的に行っていて、現在ではアメリカ、スペイン、インドネシア、レバノンなどの地域で、それぞれの地域に根差したサービスを提供しています。
クックパッドのアクセス数が最も増えるのは2月です。
というのは2月にはバレンタインデーがあり、多くの方がチョコづくりのレシピを見ます。
AWSを導入する以前のクックパッド株式会社は、バレンタインデーの3か月以上前から、サーバーを増強する手配を行っていました。
ピーク時のアクセス数に合わせて常にサーバーを確保しておくのは、非常にコスト面で無駄の多いことですし、ピーク時にサーバーが足りないと、システムダウンを起こす危険性があるからです。
ですがクックパッドの知名度が上がり、アクセス数も増えていくにつれて、サーバーの手配が間に合わないようになってしまいました。
そこで2010年、自前のデータセンターではなく、クラウドコンピューティングへの移行が決定され、AWSが導入されます。
AWSは海外にいくつものデータセンターを持っていて、現在ではユーザーは実質無限のITリソースを利用することができます。
AWSでなければ、クックパッド株式会社は海外に進出するたびに、海外のデータセンターの契約をして視察をして、運用テストを重ねなければならなかったでしょう。
AWSであれば、すべてのデータセンターに、一度動かしたシステムをコピーするだけでよいので、事業の拡大が容易です。
また、サーバーの負荷に合わせて、システムのスペックを自動で増減させるような構成にすることもできますから、2月はサーバーを増やすためにITリソースを確保、2月が終われば解約という手間も省くことができます。
ストレージ管理の手間がボトルネックになりがちなオンプレミス環境のサーバー設置に対して、AWSでは冗長化の手間も省け、障害の頻度も激減したといいます。
AWSは仮想化技術によりハードウェアの構造に縛られず、サイジングが自在なシステム設計が可能です。
新しい技術を試してみたい、短い期間だけサーバーを増強したいという、オンプレミス環境では身動きがとりにくい状況でも、柔軟に対応することができます。
AWSのサービスは発表された時点で、すべてのユーザーが利用する権利を持ちます。
特定のユーザーのみに公開されるようなサービスはありませんから、誰でも最新の技術を簡単な手続きで利用できるというメリットがあります。
実績に基づいたシステム設計・運用設計(九州大学)
企業だけでなく、大学もAWSの導入を進めている事例があります。
九州大学の大学院、システム情報科学府では、柔軟性と利便性に優れたコンピューティング環境を構築するためにAWSを導入しています。
大学のコンピューターの使用量は、学期により、また時期により大きく変動します。
ですからコンピューターリソースの季節的な需要に対応するために、ハードウェア投資をするのは、コスト面で効率的ではありません。
AWSは、オンプレミス環境の能力を超えるマシンの需要にも対応できること、データ処理を行うためのオンプレミスクラウド環境のセットアップ、計算処理能力とストレージの拡張性に優れていることなど、大学で研究するために必要なITリソースを提供することができます。
また、AWSではストレージやコンピューティング環境だけでなく、機械学習のサービスなども行っています。
九州大学のAWSは、AmazonのアドバンスコンサルティングパートナーであるSCSK社が協力して導入されました。
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、AWSの実績に基づいたシステム設計・運用設計についてまとめました。
この記事でご紹介した導入事例はごく一部で、非常に多くの企業・団体がAWSのクラウドコンピューティングサービスを導入することで、ITリソースを確保しています。
今後もAWSのクラウドコンピューティングサービスは、より普及していくと考えられます。
ご参考になれば幸いです。