もともとはAmazonの社内ビジネスのために提供されるサービスでしたが、2006年に公開され、さまざまな事業と共に世界的に普及しています。
ストレージ機能やデータベース、データ分析、クラウドコンピューティングを使ったアプリケーションサービス、セキュリティなど、多岐にわたるサービスがあり、AWSを活用している企業も増えてきています。
また、AWSに精通しているシステム関連会社が、AWSの導入を手助けするパートナー制度もあり、今後AWSの普及がさらに広がってゆくでしょう。
この記事では、AWSの月額費用などについてまとめます。
AWSの月額費用の概要
AWSは70種類以上のクラウドコンピューティングサービスを、従量制料金で提供しています。従量制料金ですから、水道や電気・ガスなどの公共料金などと同様に、基本的にはサービスを利用した分だけの料金を支払いますし、サービスを停止しても追加コストや解約料金もかかりません。
サービスを利用する期間だけ月額費用を支払い、長期契約の必要もありませんし、複雑なライセンスを取得する必要もありません。
必要なサービスを必要な期間だけ契約して利用できますから、状況に応じて最も適切な使用を選択することができます。
従量制料金ですから、ビジネスの規模や必要なクラウドコンピューティングサービスの規模が変わる場合でも、マージンを用意しておく必要がありませんので、料金が余計にかかることもありません。
オンプレミス環境で同様のコンピューティング環境を整備すると、システムを柔軟にカスタマイズでき、自社システムと連携しやすい、というメリットはあります。
一方オンプレミスのデメリットは、すべてを自社で整備する必要がありますから、初期コストがかかり、構築に時間がかかること、ネットワーク障害などのトラブルにも自社で対応しなければならず、システム維持のためのランニングコストがかかることが挙げられます。
2000年代半ばまでは、オンプレミス環境でシステムを構築する企業が多かったのですが、クラウドコンピューティングサービスが浸透するにつれ、自社でシステムを構築するよりもAWSのようなサービスを利用する方が、コストも抑えられる場合があり、さまざまな企業がAWSを導入しています。
Amazon EC2やAmazon RDSなど特定のサービスについては、リザーブドキャパシティ料金を利用できます。
リザーブドキャパシティ(予約容量)とは、12か月以上の月間最低使用レベルの契約をすることで、割引価格で利用できるサービスです。
単一の領域から毎月のデータ転送量10TBが最低ラインで、契約する使用量が多ければ、追加の割り引きが適用されます。
要するに、「10TB(以上)分の料金を毎月支払う代わりに、安い料金で利用できる」ということです。
毎月10TBを使用しなければならない、というわけではありません。
ある程度の規模でAWSを使用することを考えているなら、リザーブドキャパシティを利用した方が安くなる場合が多いです。
AWSではボリュームディスカウントを受けることができます。
S3やEC2からのデータ転送(アウト)の月額費用は階層化されていて、使用量が増えるほどGBあたりの月額費用が安くなります。
例えば、S3の標準ストレージでは、
最初の50TB / 月 0.023USD / GB
次の450TB / 月 0.022USD / GB
500TB / 月を超える分 0.021USD / GB
となっています。
AWSの運用例と月額費用
AWSを利用して、ウェブサイトを構築したい場合には、以下のような構成例が考えられます。ウェブサーバーとして利用するAWSサービス:Amazon S3
DNS設定を行うためのAWSサービス:Amazon Route53
1ページ当たりの総サイズが3MBで、月間1万PVのウェブサイトを以上の構成で構築した場合、月額費用は数百円で済みます。
Amazon S3は、3か所以上の異なるロケーションにデータを保管していて、低コストで耐久性の高いウェブサイトを構築できます。
月額費用の見積もりの詳細は以下の通りです。
月額料金はPV数によって変わりますが、
・画像を含めた1ページ当たりのファイルサイズが合計3MBで、月額10000PVとして計算
・画像を含めた1ページ当たりのファイル数が30個で、一日平均333PVとして計算
・1か月あたり合計1000ファイルのアップロードで計算
とすると、以下のようになります。
・Amazon S3
データ容量料金 $0.100 / GB × 30MB 月額費用$0.100
データ転送料金 $0.201 / GB × 30GB 月額費用$3.60
ダウンロードリクエスト料金 $0.04 / 10000リクエスト×149850リクエスト 月額費用$0.5994
アップロードリクエスト料金 $0.05/1,000リクエスト×10,000ファイル/月 月額費用$0.5
・Amazon Route53
ホストゾーン $0.50/1ホストゾーン/月×1ゾーン 月額費用$0.50
標準的クエリ $0.500/100万クエリ×200万クエリ 月額費用$1.00
以上で、かかる月額費用は合計$6.29です。
より高い負荷がかかる可能性があるウェブサイトを構築する場合には、負荷状況に応じてスペックを自動的に増減させるようなクラウドコンピューティングサービスを利用することもできます。
オンプレミス環境で同様の環境を構築しようとすると、サーバーの負荷に合わせてサーバー数を増やしたり減らしたりするのが一般的です。
その場合、アップグレードまでの負荷対応、不要なリソースに対するコストが発生します。
AWSであれば、トラフィックに合わせてリクエスト処理を最適化し、必要に応じてスペックを自動で増減させることができます。
サーバー台数を増やすために、オリジナルのEC2インスタンスからAMIを作成し、ロードバランサーとしてElastic Load Balancing、サーバー負荷のモニタリングツールとしてCloud Watchを利用します。
あらかじめ負荷条件を設定することで、必要な分のサーバーを稼働させることができます。
構成例は以下の通りです。
サーバー環境 Amazon EC2
ロードバランサー Elastic Load Balancing
モニタリングツール Amazon ClroudWatch
自動スケーリング機能 Auto Scaling
法人におけるシステム構築は、安全性やセキュリティ、拡張性などが非常に重要です。
ウェブサイトやウェブアプリケーション、社内業務向けなど、様々な用途でAWSを利用することができます。
AWSの月額費用と課金体系
AWSの課金体制は、・時間単位
・使用量単位
・サービスの特性に応じた単位
が代表的です。
上でもご紹介したAmazon EC2が時間単位での課金体系を採用しています。
時間単位のサービスには$○○ / 時間というように単価が決まっていて、そのサービスが稼働した時間に応じて月額費用がかかります。
AWSの各種サービスには、
・無料枠があります
・すべて無料です
・料金がかかります
という表現が使われていおり、無料で利用できるものと、利用に料金がかかるものがあります。
料金がかかるサービスの中には、一定量の無料で利用できる範囲が設定されているサービスがあります。
例えば以下のようなサービスです。
Amazon Lightsail(コンピューティング) :30日間無料(750時間 / 月)
:無料トライアル
AWS RoboMaker(ロボット工学) :25 SU使用時間無料
:12か月間無料
Amazon RDS(データベース) :750時間 / 月のdb.t2.microデータベース
:12か月間無料
AWS Lambda(コンピューティング) :100万 / 月のリクエスト無料(無期限)
Amazon S3(ストレージ) :5GBの標準ストレージ
:12か月間無料
Amazon EC2(コンピューティング) :750時間 / 月
:12か月間無料
Amazon DynamoDB(データベース) :25GBのストレージ(無期限)
Amazon SageMaker(機械学習) :250時間 / 月
:無料トライアル、最初の2か月間
Amazon SageMaker Ground Truth(機械学習)
:2か月無料トライアル
以上のように、無料枠が設定されているサービスについても、無料トライアルのもの、無期限で一定量が無料になるものがあります。
また、稼働時間で月額費用が設定されているサービスについても、隠れた料金が発生することもあります。
例えばAmazon EC2は、EC2とEBS間のデータ転送量、EC2とインターネット間のデータ転送量などによっても料金がかかります。
簡単なシステムならまだしも、ある程度複雑なシステムをAWSで構築しようとすると、複数のサービスを利用することになり、そのすべての背後の料金を計算して、厳密な試算になります。
また、ウェブページやコンテンツ配信サービスなどでは、そのサービスがユーザーに利用された量によっても月額費用が変わります。
AWSの課金体系は以上のように非常に複雑で、利用量によっても料金が変わりますから、構築したいシステムの種類や規模によって、料金が変わりますから、一概に月額費用はいくらです、と言えるものではありません。
クラウドコンピューティングサービスの利点は、構成を柔軟に変化させられることですから、料金を厳密に計算するというよりは、「このシステム構成なら、最低はいくらくらいかかり、それ以上の規模を拡張するといくらくらいになる」という考え方をすべきです。
とはいえ、システムの構築前にどれくらいの月額費用がかかるのかは、概要であっても知っておきたいでしょう。
AWSには簡易見積もりツールが用意されていて、ウェブサイト上で条件を入力すると、月額費用の概算見積もりをしてくれます。
是非ご活用ください。